導入部
「研修は充実していますよ」
就職活動中、そう説明されて入社を決めた調剤薬局。しかし、いざ働き始めてみると、想像していた環境とは大きく違っていました。集合研修はほとんどなく、基本はOJTのみ。質問したくても忙しそうな空気に気圧され、聞けないまま日々が過ぎていきます。
入社から3か月。「こんなはずじゃなかった」と後悔し始めた新卒薬剤師は、決して少なくありません。
この記事では、教育制度がない調剤薬局を選ぶと何が起きるのか、そして就活中にどう見抜けばいいのかを、現場でよく見る実例をもとに解説します。
本文1:入社後に気づいた「教育制度なし」の現実
研修は充実の実態は「先輩の背中を見て学べ」
新卒で入社したAさん(仮名)は、「研修がしっかりしている」と聞いてこの薬局を選びました。しかし実際の集合研修は、入社初日の1日のみ。会社説明と最低限のルール説明が終わると、翌日からすぐに店舗配属でした。
「OJTで教えるから大丈夫」と言われていたものの、現実は”見て覚えろ”に近い状態。忙しい時間帯に質問すると、「あとでね」「今は無理」と言われ、そのまま流れてしまいます。
調剤や服薬指導はなんとか先輩の動きを真似してこなせても、薬歴の書き方は完全に自己流。明確なマニュアルはなく、「それ、前の人はこう書いてたよ」と人によって言うことが違うのが当たり前でした。
実際、新卒薬剤師向けのアンケートでも、「研修不足を感じた」と答えた人は83人中33人と、約4割にのぼります。
Aさんが感じた不安や戸惑いは、決して特別なものではありません。
本文2:なぜ教育制度がない薬局が存在するのか
教育を「コスト」と見る経営思想の危険性
そもそも、なぜ教育制度が整っていない調剤薬局が存在するのでしょうか。
本質的な原因は、薬剤師を「資産」ではなく「消耗品」として見ている経営思想にあります。
教育には時間も人手も必要です。
しかし教育を「コスト」と捉える薬局では、その時間は削減対象になります。その結果、教育担当者を専任で配置できず、「業務の合間に教える」体制になりがちです。忙しくなれば、当然教育は後回しになります。
さらに、「どうせ新卒はすぐ辞める」という前提で採用しているケースも少なくありません。
すると、教育しない → 成長できない → 不安が募る → 本当に辞める、という悪循環が生まれます。
採用担当として現場を見てきた中でも、教育に投資しない薬局ほど、離職を前提に人を採る傾向があると感じます。処方箋枚数を増やすことだけを重視し、薬剤師一人ひとりの成長には目が向いていない。
その思想が、教育制度の有無に如実に表れるのです。
本文3:教育制度がない薬局の見分け方
面接・見学で確認すべき5つの質問
では、就活中にどうやって見抜けばいいのでしょうか。
面接や見学で、次の5つは必ず確認してください。
1つ目は、「新卒研修は何日間ですか?」
1週間未満の場合、かなり注意が必要です。
2つ目は、「教育担当者は専任ですか?」
「業務の合間に教えます」という回答は危険信号です。
3つ目は、「教育マニュアルはありますか?」
「先輩が教えます」だけで終わる場合、属人化している可能性が高いです。
4つ目は、「1年目の薬剤師は何人いて、何人残っていますか?」
離職率は、教育の実態を最も正直に表します。
5つ目は、「どのくらいで独り立ちを期待されますか?」
1か月で独り立ちと言われたら、かなり無理な前提です。
本文4:いい薬局の教育体制とは
薬剤師を「資産」として見る薬局の特徴
一方で、薬剤師を「資産」として見る薬局は、教育への姿勢がまったく違います。
集合研修は最低でも2週間から1か月。教育担当者は専任で、業務時間内に指導時間が確保されています。
調剤・服薬指導・薬歴記入のマニュアルが整備され、定期的な面談やメンター制度でフォローも行われます。その結果、1年以内の離職はほとんど起きません。
教育はコストではなく、将来への投資。
その考え方が、制度や現場の雰囲気に自然と表れます。
まとめ
教育制度の有無は「経営思想」の違い
教育制度がない薬局は、薬剤師を消耗品として扱っている可能性が高いです。
一方、教育制度が整っている薬局は、薬剤師を資産として長期的に育てようとしています。
就活では「研修が充実しています」という言葉だけを信じないでください。
具体的な内容を確認し、5つの質問を通して、本当に教育する気があるのかを見極めましょう。
あなたの成長を本気で考えてくれる薬局は、必ずあります。
焦らず、納得できる選択をしてください。
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